●Special・IPv6が実現する次世代インターネット●

IPv6普及に向けた国内外の動向と今後の方向性

IPv6普及・高度化推進協議会広報担当
中村 尚氏

■e-Japanが掲げる日本のIPv6


 IPv6自体は1990年頃から長きにわたり検討が進められている技術ですが、現行のインターネット(IPv4)の爆発的な普及と、プライベートアドレスの活用によるIPアドレス枯渇問題からの当面の開放によって、普及に向けた動きはそれほど活発化されてきませんでした。

 とくに規格自体を生み出した米国では、当初より大量のIPv4アドレスを保有していたことから、一般的な開発ターゲットとしては、全く視野から外れていたといっても過言ではありません。

 日本においてIPv6が注目を集めだしたのは、政府が示したe-Japan戦略の中で、超高速インターネットアクセス網の整備とともに中核的位置づけがされてからとなります。

■IPv6普及・高度化推進協議会

 IPv6普及・高度化推進協議会(以下、本協議会)は、e-Japanなど、政策の動向を鑑みて、2000年10月に発足いたしました。その後、総務省関連の2001年度補正予算において、IPv6アプリケーションの研究開発および実証実験が大きく取り上げられ、IPv6の進展への期待がにわかに高まったことを受けて、2001年10月から現在のような体制での運営となっています。

 協議会の活動には大きく次の3つがあります。

@ワーキンググループの運営
 現在8つのワーキンググループ(以下、WG)と2つのスペシャルグループ(以下、SG)が運営されています(表1参照)。


表1 IPv6普及・高度化推進協議会におけるワーキンググループの構成

 各WGは参加メンバーの自発的活動により推進され、イベント的取組みや事業において必要なコンセンサスの形成、標準化などの検討を行っています。また、SWについては、必要に応じて関係するメンバーによる柔軟な編成を行って推進されています。

A広報プロモーション活動
 WGでの研究成果や協議会で取り組む各種イベント、各会員の研究や開発の成果などのプロモーション活動を支援します。

 そもそも、前述の補正予算等を活用して各社が行った開発成果を、まとまった成果としてプロモーションすること自体、協議会のミッションの1つだったという経緯もあります。

 具体的には、プレス活動の他、基本戦略SGの中にプロモーションSWGを設置し、具体的には国内外の関連展示会やショールーム(GALLERIA v6)における会員による開発成果物の常設展示などを行っています。

B横断的実験
 状況に応じ、協議会が主体となり、会員各社が連携実施する実証実験等を行っています。これまで行った大きな実験は主として2つあります。

 1つは2001年度の補正予算の流れで行った「IPv6アクセス網および情報家電による実証実験」です。参加ISPをIPv6で接続し、さらにISP各社の協力を得て一般のインターネット接続サービス利用者からモニターを募集し、約850人に向けてIPv6接続サービスを提供し、各社が開発したアプリケーションの一部を貸与するなどして実際に利用していただくといった実験を2002年3月に行いました。

 もう1つが、2002年に行われたサッカーのワールドカップと、その直後に行われたIETFをターゲットとして首都圏と成田空港を結ぶ成田エクスプレスへ、IPv 6対応の公衆無線LANサービスを提供する「成田エクスプレスおよび成田空港における無線インターネット実証実験」です。後者は、JR東日本の協力を得て、NTTドコモのFOMAとIEEE 802.11bの無線LANを使用し、成田エクスプレスのグリーン車内でIPv6接続サービス(IPv4も接続可)を実験提供しました。

 これらの実験の他にも、諸々の事件においてすでに構築済みのIPv6のネットワークを使用したミニライブ等の提供といった実験も行っています。

■IPv6の普及に向けた動き

 IPv6の普及については、魅力ある新たなアプリケーションの開発とインターネット接続サービスの提供拡大が必要です。どちらか1つを突出して進めることは困難です。本協議会におけるIPv6の普及活動は、各企業および研究者による開発だけではなく、それらを支援する協議会と国との連携によって進められており、2002年度までに行われたさまざまな実験等を受け継いで、2003年度は、いよいよ具体的な立ち上がりの時期に入ってきたと考えます。

■アプリケーションの開発動向

 何より普及を牽引する大きな原動力の1つとして期待しているのが、付加価値の高いIPv6の特色を活かしたアプリケーションの開発です。

 三菱総合研究所が行った調査によると、一般利用者から最も関心の高いIPv6の特性を活かしたアプリケーション分野として、防犯等セキュリティ関連があげられています。

 本協議会が運営するショールーム「GALLERIA v6」における展示内容(表2参照)を見ても、Webインタフェース等を介した遠隔カメラシステムの展示が多く、次いで家電(ビデオ、冷蔵庫)などの遠隔操作に関する内容が見受けられます。


表2 「GALLERIA v6」における展示品

 一方、2002年度の開発成果(=最新のIPv6アプリケーション)が一堂に会した展示会「Net.Liferium 2003」(2003年3月に開催)では、とくに映像によるコミュニケーションが脚光を浴びました。

 たとえば、テレビ会議システムについても、数100KbpsからDV品質の30Mbpsまでさまざまな用途や環境を想定した種類のシステムが提案されており、その他にもWebカメラによる遠隔監視、ゲーム機を使用したものなど、多種多様な映像コミュニケーションに関連する開発成果が紹介されています。

 昨今のアプリケーション開発においては、IPv4では困難なアドレスの大量確保に加え、端末同士がサーバや交換局を介さずに直接繋がり効率よくコミュニケーションができるP2P(ピア・ツー・ピア)型システムの実現などがIPv6の魅力として注目されており、今後も引き続きVoIP、あるいはIPによるビデオ電話といったアプリケーションの開発に大きな期待が寄せられるものと考えます。

 また、本協議会が中心となったアプリケーション開発の活動として、一般からの公募によるIPv6アプリケーションコンテストが推進されています。その一環として、2003年5月に、アイデア部門の結果発表が行われ、10作品(奨励賞5作品、企画賞5作品)が選ばれました。受賞作品の傾向としては、駐車場システムや万歩計、新聞、ラジオなど移動型の用途との組み合わせによる、極めて身近なシステムのIP化が示されており、技術先導的な開発の枠を超える応用アイデアが出され評価されました。2003年7月には、インプリ部門(実際に動くかたちに実装されたものを対象)の結果発表が予定されており、一層の開発者の拡大が期待されます。


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