●創刊40年記念 特別寄稿・特別インタビュー

日本電信電話株式会社
代表取締役副社長
ブロードバンド推進室長
和才 博美


“光”新世代ビジョン

−ブロードバンドでレゾナントコミュニケーションの世界へ−


■はじめに

 昨年11月25日、日本電信電話株式会社(以下NTT、代表取締役社長:和田紀夫)が発表した「“光”新世代ビジョン」は、インターネットが「ナローバンドからブロードバンド」へ大きな変革期を迎える中で、本格的ブロードバンド&ユビキタス時代の到来がもたらす社会生活や企業・経済活動へのインパクトとその実現に向けて、グローバル情報流通事業に携わるNTTとしての取組みの方向性を明らかにしたものである。

 NTTグループは、この“光”新世代ビジョンを共通のコンセプトとし、時代のニーズ、IT市場の変化を先取りしながら、グループの有する経営リソースをダイナミックに最大限活用し、その具現化に向け全力で取り組む。

■“光”新世代ビジョン」策定の背景と目的

 現在インターネットが「ナローバンドからブロードバンド」への大きな変革期を迎えており、いわゆるIT革命の第2フェーズに入ってきた重要な時期にある。

 ナローバンドのインターネットでは、ユーザはメールの交換やWebにアクセスして情報を収集する情報アクセス型の利用が主体であったが、ブロードバンドでは、これらの利用形態に加えて、映像の双方向コミュニケーション型が主体となるも
のと考えている。そして、その際の映像コンテンツとは、映画などのコンテンツではなく、ユーザ自身が、あるいはリアルの世界の映像そのものが主役となるコンテンツである。今回の「“光”新世代ビジョン」を策定した背景と目的には3つのポイントがある。

 1つ目は、これからのブロードバンド時代の主流となるサービスは、映像による双方向コミュニケーション型であり、その意味から高速・広帯域、常時接続、双方向性に優れた光がこれからの本命になること。

 2つ目は、光による映像の双方向コミュニケーションを基本とする種々のアプリケーションが、「時間と距離の制約」の解消によるグローバルな“知”の共有化、“知”のビジネス化を可能とし、安全で豊かな社会生活の実現や企業活動の生産性・競争力の強化に資すること。また、現在の日本が抱える少子高齢化や環境問題等の社会的課題を解決する重要なファクターの1つになり得ること。

 3つ目は、この“光”新世代に向けた、NTTグループの取り組みについて明らかにすること。つまり、副題に掲げた「光によるレゾナントコミュニケーション環境」の実現に向けて研究開発を推進するとともに、グローバル情報流通事業に携わるものとして果たすべき役割・ミッションについてその方向性を明らかにすることである。

 なお、副題にある「ブロードバンドでレゾナントコミュニケーションの世界へ」のレゾナントとは、「共鳴する、共振する、響く」の意味を持つ英語で、レゾナントコミュニケーションとは、「人や企業など世の中のあらゆるものが」「ブロードバンドで双方向(インタラクティブ)に」「“いつでも、どこでも、誰(何)とでも”ユビキタスにネットワークに結ばれ」「“安全・確実・簡単”でユーザビリティに優れ」、世の中と「共鳴」しながら進歩する、光による新世代のコミュニケーション環境を意味するものとして、ネーミングしたものである。

■レゾナントコミュニケーション環境

 レゾナントコミュニケーション環境のキー・ワードは4つある。ブロードバンド(双方向)とユビキタス、そして“安全・確実・簡単”な優れたユーザビリティとコネクティビティ(接続性)である。

 レゾナントコミュニケーション環境は、ナローバンドでは実現できなかった、映像等の利用によるリアルで自然なコミュニケーションを可能とし、通信本来のミッションである「時間と距離の克服」を実現するものである(図1)。


図1 レゾナントコミュニケーション環境

 「時間の克服」により、人の可処分時間が、そして「距離の克服」により人や企業の活動範囲が飛躍的に拡大し、国、地域、また業際や世代を超えて、人や企業が持つ「知(知識)」の共有化、「リアリティ」の共有化、そして「商(商取引)」のボーダレス化が進展する。これにより個人や企業は、世界中に存在する“知”の最適な選択・組み合わせ、つまり「知の協創」が可能となり、社会生活や企業活動に大きな変革がもたらされる。

■レゾナントコミュニケーション時代の社会


(1)個人の“個倍化”の進展

 “時間と距離の克服”は、個人が持つ可処分“知”のグローバルな流通を可能とし、一人の人間が同時に複数の立場になれる“個倍化”が進展する。“個倍化”とは一人の人間が同時に複数の立場になり、潜在的な“知”を顕在化させる意味を表わす造語であるが、大きく次の3つの特徴を有している。

・ビジュアルなFace-to-Faceのコミュニケーションによる人と人とのリアルな交流。

・グローバルに地域・世代を越えた新たなコミュニティの形成。

・主婦やシニア等の社会・経済活動への参画が可能となることによる、個人が有する「知(知識)」や「価値」のビジネス化の大きな進展。レゾナントコミュニケーション環境は、本格的な在宅勤務を可能とし、音楽や囲碁、ガーデニングなど、地域・世代を超えたコミュニティ活動の活性化や、個人の持つ知識やスキルのビジネス化を進展させることになる。


 図2は子供を持つ専業主婦の例であり、「ビジネスウーマン」「母親」として時間や知識を最大限活用することが可能となることを示している。


図2 新たな行動モデルの出現(“個倍化”)

 図3は、シニアの社会参画を事例として取りあげている。宮崎県にお住まいの高校の美術の先生を定年退職したご主人と奥さんのご夫婦がモデルである。


図3 シニアの社会参画モデル

(2)企業の“Web的連鎖”の進展 へ >> 

 

 


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