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ICTソリューション総合誌 月刊ビジネスコミュニケーション

ビジネスコミュニケーション
第14回:ゴール分析
NTTデータ 技術開発本部 副本部長 山本修一郎
NTTデータ 
技術開発本部
副本部長 
山本修一郎

概要

今回はゴールを用いた要求分析手法について紹介する[1]。本稿では、まずゴール分析の位置づけを示し、ゴールとは何かを説明する。次いでゴール分析を用いた要求分析手法を紹介する。また、ゴール分析を効果的に進める上での留意点についても述べる。

ゴール分析の位置づけ

図1 ゴールと要求、仕様、設計の位置づけ
図1 ゴールと要求、仕様、設計の位置づけ

ゴール分析は開発対象システムの要求が達成すべき目標を分析し定義するための手法である。要求の目標を明確にして顧客と合意することで、設計の妥当性が機能仕様に対して確認できるように、機能要求の妥当性もゴールに対して確認できるようになる。図1にゴールと要求、仕様、設計の相互関係を示した。

もしシステム開発の背景となる問題が明確であれば、トップダウンでシステム開発のゴールを明示的に定義できる。しかし、システムが解決すべき問題が明確でなければ、問題を解決する前に、問題自体の構造を明らかにする必要がある。問題構造が明確になったら、解決すべき問題を定義し、システムが具備すべき特性としての非機能要求と機能要求との関係を明らかにする。

したがってゴールの定義には①問題分析②問題定義③非機能要求と機能要求の関係分析という3つの段階があることが分かる。そう考えると、ゴールと非機能要求の観点から機能要求を段階的に抽出する手法を構成できることに気づくだろう。

ゴールとは

システムに対する一般的な非機能要求としては、使いやすさ、柔軟性、移行の容易性などが考えられる。ゴール分析ではこれらの定性的で曖昧な要求を「ソフトゴール」と呼ぶ。

ソフトゴール間の関係

ソフトゴールには、4つの関係がある。

・AND関係:
ゴールA、Bがともに成立するときゴールGが成立するか、ゴールA、Bのどちらか一方でも成立しなければゴールGも成立しないとき、ゴールAとBは、ゴールGに関してAND関係にある。
・OR関係:
ゴールA、Bのどちらか一方が成立するときゴールGが成立するか、ゴールA、Bのすべてが成立しなければゴールGも成立しないとき、ゴールAとBは、ゴールGに関してOR関係にある。
・+関係:
ゴールAが成立するとき、ゴールBが成立するとき、ゴールAはBに対して+関係にある。
・-関係:
ゴールAが成立するとき、ゴールBが成立しないとき、ゴールAはBに対して-関係にある。

ソフトゴールの充足性

もし、ソフトゴールに対して、十分なだけの肯定的な根拠があれば、ソフトゴールを満足できるという。もしソフトゴールに対して、十分なだけの否定的な根拠があれば、ソフトゴールを満足できないという。このように、ソフトゴールは、肯定か否定かのどちらか一方にいつも決められるわけではないことを注意しておく。このようなソフトゴールに対しては、関係者に意思決定を仰ぐことになる。重要なことは、ソフトゴールの背景を明確化できるように分析しておくことだ。

 

ゴール分析の例

図2 企業の競争力を高めるためのゴール分析図
図2 企業の競争力を高めるためのゴール分析図

企業の競争力を高めることをゴールとし、そのために必要なサブゴールを分析した図の例を図2に示す。この図では、IT投資効果=IT導入度×ITケイパビリティ(IT活用度)という関係をゴール分析図で表現している。

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