NTT社会情報研究所(以下、社会研)は、ICTにより高度化する社会システムや人間社会の変革と発展を目指し、広範な社会価値、セキュリティ、プライバシー、倫理、法律・制度等に関する研究開発を行っている。現在重点的に取り組んでいる研究テーマを中心に、所長の鈴木勝彦氏にお話を伺った。
NTT社会情報研究所 所長鈴木 勝彦氏
デジタルとリアルが連携する分散型ネットワーク社会において、個人の自律と集団の調和が利他的に共存している状態「Social Well-being」の実現に向け、人の内在的価値を重視するWell-beingに基づくサービスや社会の仕組みを共創するための方法論とその実践による社会価値創出の取り組みについて紹介する。
AIや新技術の導入、IoTデバイスの普及などにより、パーソナルデータを利用するサービスが増加する一方で、個人情報保護法違反やプライバシー問題の発生リスクが高まっている。この問題解決に向けて、社会研が研究する「プライバシー影響評価(PIA)実践支援技術─らくらくPIA─」と、同技術の活用事例を紹介する。
社会研はAI4大カテゴリーの主要なアルゴリズムによる学習・推論を、データが暗号化されたままの状態で実行可能な「秘密計算AI ソフトウェア」を世界で初めて開発した。国立情報学研究所(以下、NII)と社会研はこのソフトウェア環境をNIIの計算機上に構築し、大学や研究機関の研究者に試用してもらうトライアルを2023年1月末から実施している。
業種・業界を越えたデータ利活用の取り組みが活発化するなか、社会研は企業が安心してデータを持ち寄れる「トラステッド・データスペース」の実現に向けた研究開発を進めている。本稿では要素技術の1つである「データサンドボックス技術」、および世界各国で導入が進むデータスペースとの相互接続に関する取り組みを紹介する。
サプライチェーンを通じてシステムや機器に不正な構成要素や脆弱性などが紛れ込み、従来にない大きなセキュリティリスクを社会にもたらす問題が世界的に注目されている。そこで社会研は、システムや機器に関するソフトウェア構成や脆弱性などによるリスクを可視化し、リスクを低減する技術の開発および社会実装に向けたコンソーシアムの立ち上げに取り組んでいる。
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