はじめに

前職の人事部では、シニアマネージャーとして「働き方改革」に携わってきた。この経験も踏まえてNTTドコモの「働き方改革の取り組み」を紹介する。

NTTドコモの事業について

「働き方改革の取り組み」を紹介する前に、まずはNTTドコモの概要や事業の方向性について簡単に説明する。

NTTドコモは1992年にNTTから分社し、独自に営業を開始した。従業員数は7,767名(国内グループ27,464名)〈2018年3月31日現在〉で、東京本社と北海道から九州まで全国8支社により営業活動を行なっている。

主な事業として携帯電話サービスや光ブロードバンドサービスなどの通信事業と動画・音楽配信サービスや金融・決済サービスなどのスマートライフ領域から構成されている。

NTTドコモの目指す方向性は、モバイル通信企業からいくつかの変遷を経て付加価値協創企業として、新たな付加価値をドコモ自らが創造するだけでなくパートナーの皆さまとともに「協創」していくことを目指している(図1)。

図1 ドコモの中期戦略

ダイバーシティ経営から働き方改革へ

「働き方改革」の取り組みに向けて、まずはダイバーシティ経営が入り口となってくる。競争が激化し多様化するお客様ニーズに対応するためには、多様な人材の力を最大化し、事業競争力の強化・変化への対応・イノベーションの創出など「新しい価値」を提供し続ける企業になることが求められているからである。

一方、企業として「働き方改革」は何のために行っているのだろうか?足元の法令遵守から生産性向上、雇用確保といった視点も必要だが、本質的には従業員一人ひとりの人間力を高め「本当の豊かさ」を追求することにある。具体的には、今の仕事を効率化することで家族との時間や社外コミュニケーション、学びなど新しいチャレンジにつながる時間を創出し、結果的に世の中へ「新しい価値」を提供する土壌作りが期待されている。

働き方改革の取り組み

ドコモの「働き方改革」は自律とチャレンジを推進する働き方を目指している。そのための取り組みは前述した「ダイバーシティ経営」や労働生産性の向上などに資する「ワークスタイルの選択」、健全な体質を維持する「健康経営」の3つの柱から構成される。

とりわけ「ワークスタイルの選択」として、社員一人一人の働き方の「選択」を拡大するため、オフィス環境のIT化、在宅勤務など社内制度の整備に努めている。

オフィス環境のIT化としては、業務基幹システムDREAMSや情報共有基盤DiSHを導入し、どこでもオフィス業務ができる環境整備を進めてきた。セキュリティとアプリが進化し、生体認証を含めた3Key認証や通信暗号化、遠隔ロックなどの機能も搭載されている(図2)。

図2 「オフィス環境のIT化」による働き方改革推進

また、社内制度の整備については、育児・介護中の社員の始業・終業時刻の繰上げ・繰下げを可能とする「スライドワーク」を2015年に導入するとともに、テレワークによる「在宅勤務」の場所・対象者・利用回数の制度拡大を2016年に実施。在宅勤務に関しては、2015年度は利用者※1が170名であったが、2016年度には1,054人、2018年度には6,344人へ飛躍的に拡大した。現在も制度の拡張・多様化を図っており、フレックスタイム制の本社全組織への拡大やサテライトオフィス・シェアオフィスも含めた在宅勤務の見直し、分断勤務の導入、障がいのある社員も含めたスライドワークの見直しなどを行っている。これらの「環境整備」により、社員自ら効率的な働き方を選択することで「自律」が促されている。

これらの取り組みにより、とりわけ法人営業部門においては残業時間(一人あたり)が15%削減※2した一方で、生産性(売上/総労働時間)、働きがい(社員満足度)も向上したとの結果も出ている。

社会における評価としては、「テレワーク先駆者百選総務大臣賞」を受賞するとともに経済産業省の「健康経営優良法人2018」(大規模法人部門)に認定された。また、ダイバーシティ経営の観点では、経済産業省と東京証券取引所が共同実施している「なでしこ銘柄」に選定されるとともに、女性活躍推進法に基づく「えるぼし認定」で最も上位となる「えるぼし3段階目」に認定された(図3)。

図3 関連表彰の受賞歴

「働き方改革」に向けた法人ソリューション提案

ドコモ自身の働き方改革を推進するだけでなく、2017年より法人営業部門の重点分野として「働き方改革」に向けた法人ソリューション提案を行ってきた。具体的には、ドコモ自身で取り組んでいる「働き方改革」の経験から、お客さまのニーズに合わせて、モバイルとクラウドを活用したソリューションのご紹介を進めている。2018年は、働き方改革商材の導入企業が全国で5,100社を超える実績となった。

2019年、大企業に対しては一歩進んだ生産性向上の取り組みが求められる一方、中小企業に対しては2020年4月の働き方改革関連法の施行を見据え、法令遵守と生産性向上の取り組みが本格期を迎える。

ドコモならではの工夫としてハード面の提案だけでなく、本社法人営業部門のオフィス見学ツアーを幅広く実施することで、ドコモが目指す働き方改革を踏まえたオフィス設計や紙を使わない企業風土醸成、フリーアドレス化によるフラットな組織作りなどのソフト面を体感してもらうことを意識している。

次回は「デジタルトランスフォーメーション(DX)と働き方改革」を中心に紹介していく。

※1 ドコモ本社+8支社の合計実績

※2 2017年5月と2016年5月の時間外労働時間の比較

〈働き方改革のことなら下記へ〉

http://www.nttdocomo.co.jp/biz/special/workstyle/