特集 世界をリードするNTTが考えるIOWN

3 IOWNへの期待とわが社の取り組み PartⅠ (2020年8月号)

自律分散型の 地域コミュニティ創生に向け、プレIOWN技術を提案

NTTアドバンステクノロジ(以下、NTT-AT)は、NTTの「IOWN構想」発表を受け、2019年10月に「IOWN推進準備室」をいち早く設立。半年後の2020年4月には「IOWN推進室」へと体制強化を図り、IOWNビジネスの本格展開を開始しました。

NTTアドバンステクノロジ株式会社

取締役 IOWN推進室 室長 辻 ゆかり

IOWN構想の実現を支援するフロント・コーディネータ機能を担う

我々を取り巻く環境として、少子高齢化に伴う生産年齢人口の急減や、自然災害の強大化・多発化、社会・経済のデジタル化の進展とセキュリティリスクの増大、さらには昨今の世界的なCOVID-19拡大の影響など、さまざまな変化が起きています。また、企業のみならず社会全体でDX(デジタルトランスフォーメーション)が大きく進みつつあり、通信の重要性がますます高まるとともに、通信トラフィック量も処理すべきデータ量も指数的な勢いで増加の一途をたどっています。その一方で、集積回路の高密度化の限界から、ムーアの法則に陰りが見え始めたことによって、増大し続けるトラフィック量が、設備投資と電力消費の急激な増大に直結するリスクに直面しています。

このような状況下で提唱されたIOWN構想は、圧倒的な低消費電力とシンプルなオペレーションの新社会情報基盤の実現を目指した取り組みです。NTT、インテル、ソニーの3社が設立した、IOWN構想の実現・普及を促進する国際的なフォーラム「IOWN Global Forum」には、世界各国から様々な企業が多数参画しています。

NTT-ATでは、他に先駆けていち早く“IOWN”を冠した組織を設立し、約半年間の準備期間を経て本年4月から本格的な取り組みを開始しました。私どもIOWN推進室の主要ミッションは、IOWN構想実現への貢献を第一義に、フロント・コーディネータとして、IOWNの要素技術のR&Dを推進するNTT研究所と、その技術を応用・事業化するNTTグループ会社やパートナー企業と連携を図りつつ、将来コンセプトの可視化、IOWN/プレIOWNの展開支援、IOWN基盤技術開発の推進をワンストップで推進し、技術イノベーションを起こすことです(図1)。

図1 フロント・コーディネータ機能のイメージ

自律分散型の地域コミュニティ創生に向けプレIOWNから始動

IOWN推進の基本方針は、図2に示すように、災害時も通信・電力が利用可能な自律分散型の地域コミュニティ創生を図ることです。まずは事業会社と連携して先行技術を活用したプレIOWNから取り組んでいきたいと考えています。その実現に向け、ATとしては「無線」、「エネルギー」、「デバイス」の技術領域に注力しています。

図2 IOWN推進の基本方針

プレIOWNの具体的な取り組みとしては、地域が抱える課題・ニーズの解決に向けたNTT東日本の地域エッジ構想「REIWA(Regional Edge with Interconnected Wide-Area Network)」や、NTT西日本の地域創生ネットワークのエッジ環境への先行技術の導入提案があげられます。

例えば、オール光ネットワークにおいては、障害時の現地派遣をできるだけなくすことが求められます。リモートから機器間の配線切り替えを可能とするNTT-ATの「ROME (Robotic Optical Management Engine)」はその解決策の一つです。「ROME」は、入出力ポートに接続されているコネクタ付き光ケーブルをロボットにより接続させる点が特徴のL1スイッチです。

また、現実の物理空間の情報をリアルタイムにサイバー空間に送って、その環境を仮想的に再現するデジタルツインにおいては、トラヒックデータの収集・蓄積・分析・活用は極めて重要です。しかしながら、物理網と論理網が複雑に混在する仮想化ネットワーク環境においては、トラヒックの中身を可視化することは容易ではありません。そこで、NTT-ATは、NTT研究所のFPGA技術を活用し、 運用の効率化/低コスト化を実現するトラフィック監視システム「@FlowInspector」を開発し、2019年秋に販売を開始しました。この他にも、社内外の技術を目利きし、最適なネットワークやソリューションを提案していきます。

IOWN構想実現を支える超省電力なデバイス開発にも注力

私どもでは、これまで紹介したような地域創生ネットワークやSmart City推進に関わる一方で、それらを支える超省電力なデバイス開発にも取り組んでいます。具体的な取り組み例を以下に紹介します。

NTTグループは、IOWN構想の一環として、地球温暖化対策、再生可能エネルギーのさらなる活用、限られたエネルギー資源の有効利用などを目指した「スマートエネルギー事業」の取り組みを推進しています。こうした中、NTT-ATは、省エネルギーを志向した光学材料技術に着目した取り組みを進めてきました。

NTT-ATは、3年前より発電素子において世界的に優れた技術力を持つ日本発のベンチャー企業であるinQs株式会社(以下、inQs)と協業を進めており、室内光や低照度環境下の光を高効率に電気エネルギーに変換できるinQs製の極低照度型光発電素子“SQ-DSSC”をIoTの自立電源として用いた常設のアドオン振動センサーの製品を開発・提供しています。また本年5月には、inQsが開発した無色透明型光発電素子「SQPV」技術を使用して製造した高機能ガラス製品の国内独占販売契約を締結し、本年秋より販売を開始することを発表しました。

「SQPV」は、inQsが開発した高機能ガラス製品で、設計した二酸化ケイ素の微粒子(Solar Quartz)を電極材料に使い、紫外光と赤外光を吸収し発電する太陽電池を実現します。本技術を用いたガラスは一般的なガラス建材並に可視光を透過しつつも、赤外光を吸収する特徴を活かした遮熱・発電ガラス材料として、ESG(環境・社会・ガバナンス)に貢献します。「SQPV」技術を使用して製造した高機能ガラス製品の特徴は以下のとおりです。

  • 高効率な可視光透過率(高透明性)
  • 遮熱+発電効果で省エネと創エネを同時に実現
  • レアアースなどの希少かつ高価な材料は不使用
  • 熱エネルギーを吸収し発電へ使用

NTT-ATでは、高性能な遮熱ガラス(省エネガラス)として国内で独占販売するとともに、その特徴を活かした各種応用プロダクトの開発にも積極的に取り組みます。

革新的な技術によって持続可能な社会情報基盤作りに貢献

私どもの主要ミッションは、NTTグループを支えながら技術イノベーションを起こしていくことです。上述した光発電素子技術をはじめとする革新的な技術によって、スマートエネルギー、スマートシティを現実のものとし、IOWN構想が目指す持続可能な社会情報基盤作りに貢献していきたいと思っています。

連絡先

経営企画部 コーポレート・コミュニケーション部門 inquiry@ml.ntt-at.co.jp