特集 世界をリードするNTTが考えるIOWN

3 IOWNへの期待とわが社の取り組み PartⅡ (2021年11月号)

「5G Evolution & 6G powered by IOWN」の取り組みを加速

NTTドコモは、2030年頃の実用化を目標に6Gの研究開発を進めています。NTTも同様に2030年をひとつのマイルストーンとして革新的ICTインフラを実現するIOWN(Innovative Optical and Wireless Network)構想を掲げ、グループをあげて取り組んでいます。NTTによるNTTドコモの完全子会社化を契機に、6GとIOWNによる限界打破のイノベーションにむけた連携が加速しています。本稿では、6G-IOWN推進部の取り組みを紹介します。

株式会社NTTドコモ 執行役員

6G-IOWN 推進部長 中村 武宏

既存組織の名称を変え、6GとIOWNの連携を一段と加速

NTTドコモは、2020年3月に第5世代移動通信システム(5G)の商用サービスを開始しました。現在は5Gサービス提供エリアの拡大に加え、5Gを活用してソリューションを創り出す「5Gオープンパートナープログラム」も活用し、さまざまな分野において新規サービスやソリューションの創出に精力的に取り組んでいます。

また合わせて、5Gの導入で見えてきた課題や、ユーザー企業やパートナー企業などからのご要望も含め、5G高度化(5G Evolution)および第6世代移動通信システム(6G)が2030年代まで見通した産業や社会を支える基盤技術となるよう研究開発を推進しています。NTTも同様に、IOWN構想の実現にグループをあげて取り組んでいます。いずれも限界打破のイノベーションによるICT基盤の進化の中長期的な取り組みであり、方向性は合致しています。さらに、IOWN構想を具現化するために6Gは極めて重要な役割を担っていることから、6GとIOWNを上手く融合させることが重要です。そのため、従来よりNTT研究所とも技術的な協力を進めていましたが、2020年12月の完全子会社化を契機に、技術検討協力をより推進しています。NTTドコモは2021年7月1日、将来の移動通信システムとして、6Gの研究開発を推進してきたネットワークイノベーション研究所を6G-IOWN推進部に名称変更し、6GとIOWNの連携を基軸にした実用化研究開発を加速することとしました。最近では、無線技術だけでなくネットワーク全体の実用化研究開発やユースケースの開拓にも取り組んでいます。以前からNTT研究企画部門・NTT研究所と協力していましたが、現在では、議論や検討がよりスムーズに進むようになるなど、連携協力をさらに促進しています。

「5G Evolution & 6G」でめざす世界と技術的要件

NTTドコモでは、2020年1月にホワイトペーパー「5Gの高度化と6G」の初版を公開し、現在3.0版までアップデートしています。このホワイトペーパーでは、5G Evolution & 6Gで実現をめざす6つの技術的要求条件を示しています。

図1 6G 時代における世界観のイメージ
(出典:ドコモホワイトペーパー「5G の高度化と6G」、2021 年2 月 3.0 版)

①超高速・大容量通信

  • 通信速度向上:最大100Gbps 超
  • 100 倍以上の超大容量化(bps/m2)
  • 上りリンクの超大容量化

②超カバレッジ拡張

  • 陸上(面積)カバー率100%
  • 空(高度1万m)・海(200海里)・宇宙へのチャレンジ

③超低消費電力・低コスト化

  • さらなるビット当りのコスト低減 ・充電不要な超低消費電力デバイス

④超低遅延

  • E2Eで1ms以下程度の超低遅延
  • 常時安定した低遅延性

⑤超高信頼通信

  • 幅広いユースケースにおける品質保証
     (Reliabilityは99.99999%まで向上)
  • レベルの高いセキュリティと安全性

⑥超多接続&センシング

  • 平方km当り1,000 万デバイス
  • 高精度な測位とセンシング(<1cm)

新スローガンは、「5G Evolution & 6G powered by IOWN」

6Gでめざすネットワーク技術への6つの要求条件を実現するにあたっては、end-to-endで高速・低遅延・低消費電力を実現する上でIOWN構想の要素技術、特にAPN(オールフォトニクス・ネットワーク)が必須であると考えています。また、IOWN構想におけるネットワークの技術は、海、空、そして宇宙などさまざまなエリアへと広がっていきます。2021年5月にはNTTとスカパーJSATは、宇宙に無線通信網とデータセンターを共同構築する等の宇宙事業創出に向けて業務提携契約を締結しました。これは6Gの超カバレッジ拡張の方向性と完全に合致するものであり、現在、NTTとスカパーJSATとの連携に加わり、検討を推進しています。

IOWN構想の要素技術と6Gの無線およびネットワーク技術とのシナジーによって6Gをより良いシステムにしていくことができると思っています。現在、それら要素技術の検討・シミュレーション、実証実験の準備を行っている状況です。また、ユースケースについても、2030年代をめざしたIOWNと6Gでは課題は共通であり、これらの検討課題でもNTTの関連研究所と協力したいと考えています。

以上の点を踏まえ、IOWNの要素技術で6Gをより良いシステムにしていくということで、「5G Evolution & 6G」の後に「powered by IOWN」を付けました。そして「NTT R&D Forum Road to IOWN 2021」の開催時期(11月16日〜19日)に合わせ、ホワイトペーパー「5Gの高度化と6G」をアップデートし、新スローガンを「5G Evolution & 6G powered by IOWN」とする予定です。また、NTTドコモの研究開発活動における6G-IOWN連携のプロモーションツールとして、「6G-IOWNデモバス」を作成しました。このデモバスは「NTT R&D Forum Road to IOWN 2021」で展示予定です(図2)。

図2 「5G Evolution & 6G powered by IOWN」
デモバスの外装イメージ

2025年の大阪万博で、プレ6G-IOWNのデモ実現をめざす

6Gの標準化議論は、3GPP(Third Generation Partnership Project)の場ではまだ始まってはいません。その前段階として世界中でさまざまなプロジェクトが立ち上がっており、コンセプト固め等が行われています。日本でも総務省が、2020年1月より「Beyond 5G推進戦略懇談会」を立ち上げたのに続き、2020年12月には6Gに向けた産学官の連携を強力かつ積極的に推進するため、「Beyond 5G推進コンソーシアム」(https://b5g.jp/)が設立されました。NTTドコモもNTT研究企画部門・NTT研究所と一緒に、日本がイニシアチブを取れるように活動しています。重要なのは、3GPPで標準仕様を作成する段階で、いかに有効な特許を出せるかという点だと思っています。

優れたコンセプトと優れた技術を積極的に発表し、かつ実証して、それを世界に向けて訴求していきたいと思っています。直近のマイルストーンが、2030年までの半分の2025年に開催される「大阪万博」です。そこではNTTグループとして、プレ6G-IOWNの技術・ユースケース、デモを紹介したいと思っています。

<参考資料>

  1. ホワイトペーパー「5Gの高度化と6G」、NTTドコモ、2021年2月(3.0版)
    https://www.nttdocomo.co.jp/binary/pdf/corporate/technology/whitepaper_6g/DOCOMO_6G_White_PaperJP_20210203.pdf

連絡先

6G-IOWN推進部 6g-soukatsu-ml@nttdocomo.com