特集 世界をリードするNTTが考えるIOWN

3 IOWNへの期待とわが社のとり組み PartⅡ (2021年11月号)

IOWN構想で加速するソサエティDX

NTTデータでは、IOWN構想の実現に向けて、いち早く社会・お客さまのニーズを捉え最先端の技術シーズとの連携を強化するため、2021年1月にIOWN推進室を立ち上げました。脱炭素社会やWell-beingの実現など、より豊かな社会の実現に向けて、データ駆動型のソサエティDXを目指した取り組みの方向性について紹介します。

株式会社NTTデータ 技術革新統括本部

IOWN推進室 室長 吉田 英嗣

“Smarter Society Vision 2021”が掲げるソサエティDX

2021年7月、NTTデータは、お客さまとともに目指す5年後の新しい社会の形を「Smarter Society Vision 2021」として発表しました。本ビジョンでは、「生活者と企業・行政の互いの信頼に基づく、生活者からのデータ提供と、企業・行政によるサービスへの反映、この循環が創り出す生活者のウェルビーイングの向上、そして社会システムの変革による豊かな社会」の実現を掲げています。その中でも、特に社会課題の深刻化、生活者や企業、行政の役割が大きく変化していく6つの領域を選定し、それぞれについて期待される社会全体でのDX−ソサエティDX−の姿について検討を進めています。

図1 Smarter Society Vision 2021 に掲げた6 領域

例えばSustainable Green Societyに向けたCO2排出量削減においては、再エネ事業や製造業等の特定企業内での活動として捉えるのではなく、サプライチェーンや生活者も含めた社会全体の系で捉え、客観的なデータに基づいて行動変容に結びつけることが重要です。今後、リアルタイムに変化する電力の需給バランスを保ちながら、経済的効率と環境配慮を両立させるような製造管理や交通制御などの意思決定の最適化、そしてそれらを支えるファイナンスの最適化も必要になるでしょう。

また、Personalized Healthcare & Well-beingでは、病気やケガの際の医療データ管理だけではなく、例えば飲食や小売業界とも連携し、一人ひとりの日常生活での行動や感情もより深く理解することで、予防医療の高度化や、心とカラダの健康を意識した生活サービスの提供につなげることが期待されます。

これらはまだコンセプトレベルの段階です。「どのようにデータを蓄積するのか?」「秘匿性高いデータを、業界・業種の壁を超えてどのように連携させていくのか?」「膨大なデータをもとに、どのように予測や最適化にいかしていくのか?」「どのようにビジネスとして成立するのか?」、解くべき課題は山積しています。私たちNTTデータは、これらの課題に対して、お客さまや多様なステークホルダの方々と、社会変革パートナーとして、ともに挑戦していく存在でありたいと考えています。

IOWN構想に「光」あり

前述のとおり、ソサエティDXの実現に向けては多くの課題がありますが、IOWN構想こそがこれらの課題を解く「光」になると私たちは考えています。すなわち、非構造化データを含む膨大なデータを高速かつ効率的に処理するインフラとしてのオールフォトニクス・ネットワークやコグニティブ・ファウンデーション、そして、データを安全かつ適切に連携させるための「次世代データハブ」、さらにその上で高度なシミュレーションを行う「デジタルツインコンピューティング(DTC)」の技術群が、ソサエティDX推進の上で重要な役割を果たすと考えています。

NTTデータでは、社会動向やお客さまニーズを捉え、IOWN技術シーズのいち早い技術検証、社会実装をすすめるために、2021年1月にIOWN推進室を設立しました。当室では、全社R&D組織と二人三脚となり、NTTグループ各社との連携や、社内の公共・金融・法人の各事業部との連携を図っています。

この中で、特に私たちは「データ連携基盤」と「DTC・データ価値化」の社会実装・実用化に注目しており、これらが多種多様な業界・業種横断で活用される基盤を「社会DTC基盤」として構想し、実現に向けて検討を進めています。

図2 社会DTC 基盤の構想イメージ

目指すのは「データ駆動型社会ディベロッパ」

Smarter Society を目指すNTTデータにおいて、当室におけるIOWN事業コンセプトを「データ駆動型社会ディベロッパ」と呼んでいます。これは不動産ディベロッパが、魅力的な施設を提供し、人々の流れを生み、そこに新たなエコシステムを形成するように、私たちはデジタルツインをはじめとするデジタル技術をお客さまに提供し、データの流れやバリューチェーンを生みだすことで、社会課題解決につながる新たな産業の創出を能動的に仕掛けていきたい、という考え方です。

このために現在、大きく3つの取り組みを推進しています。

一点目は、社内各事業部のDTC関連ニーズやソリューションを情報連携するための「DTC連絡会」の組織化です。どのような業界にどのようなニーズがあるのか把握し、IOWN構想に求められる技術的期待を明確にするとともに、プレIOWNのフェーズにおいて、どのような展開が考えられるかの戦略策定にフィードバックしています。

二点目は、「IOWN共通テストベッド」と呼ぶPoC環境の構築です。社会DTC基盤のコンセプトに沿いながら、早期かつ効率的にNTT研究所技術のほか、スタートアップ企業を含む市中の先進技術を検証可能な開発環境を整備しています。また、NTTグループ各社の開発環境との接続や共通利用を推進していきます。

三点目は、「データ連携基盤」実現に向けた検討です。欧州のGAIA-Xをはじめ、世界各国でデータ連携・流通に対する制度整備も進んでいます。日本においても今後レギュレーションや商習慣に沿ったかたちでのデータ連携の仕組みの検討や、市民を含めた社会全体でのコンセンサス形成が必要です。勿論、NTTデータ単体ではなくNTTグループでの連携を図りながら進めていく必要があります。

以上のような施策をIOWN推進活動の軸としながら、NTTデータでは、これからも多岐に渡るパートナー企業の皆さまやお客さまとの共創を通じてソサエティDXの実現にチャレンジしていきます。

連絡先

技術革新統括本部 IOWN推進室 iown@kits.nttdata.co.jp