NTTデータ

千年カルテ

医療分野における社会課題解決の 一助をめざす千年カルテ

(2023年7月号掲載)

医療費増大への対応や医療業界の開発力強化などをめざし、政府は次世代医療基盤法を整備して、医療データの活用に向けた取り組みを促しています。一般社団法人 ライフデータイニシアチブとNTTデータは、次世代医療基盤法第一号認定事業者として、医療情報の蓄積、加工、活用に向けた提供を行う「千年カルテ」事業を推進しています。

高いデジタル対応力と高度な
セキュリティ技術要件を満たした認定事業者第一号

個人情報保護法の特則となる次世代医療基盤法においては、患者に対し十分に説明をした上でその患者や家族の拒否がなければ医療情報を収集できるオプトアウトにより医療情報を収集し、活用しています。
情報の収集・管理・活用には万全が期す必要があるため、認定事業者として認定されるには、高い情報セキュリティを確保し、十分な匿名加工技術を有するなど一定の基準を満たす必要があります。一般社団法人ライフデータイニシアチブとNTTデータは、認定事業者第一号として2019年12月に認定を受け、情報の収集・蓄積、さらには二次利用に向け、匿名化処理を実施し、匿名加工医療情報の提供を「千年カルテ」事業として進めています。
千年カルテの医療情報は、契約医療機関において、問診から検査・診断、処置・処方までの一連の医療行為データを一気通貫で取得しています。
大きな特徴として、アウトカム情報(診療行為を実施した結果に関する情報)の利活用ができることです。
具体的には、各種検査の結果データ。電子カルテに医師がテキストで入力した情報から処置や投薬後の効果や有害事象情報など、既存のリアルワールドデータベース研究では課題であった情報を研究やエビデンス創出へ活用することが可能となっています。

図1 2次利用サービス概要

 

先進的研究開発を促進する
千年カルテ二次利用サービス

医療機関から収集した情報は、匿名加工して製薬企業等に提供し、健康・医療に関する先端的研究開発および新産業創出の促進につなげていくことをめざしています。
具体的には、千年カルテ契約医療機関から診療情報であるDPC調査データ、診療報酬明細のレセプト、電子カルテの3つの医療情報を収集しています。そのうち、国にデータの二次利用に関する届出を行った医療機関のデータを二次利用システムに格納して、製薬企業やアカデミアの研究者の利用目的を元に匿名化処理を実施し、提供するビジネスフローとなります。
データの活用を行う企業等への提供は、利用目的等審査委員会での審査を経て行われます。研究者への提供方法は2種類。ローデータに対して匿名化処理を実施し、患者ごとのラインリスト形式で提供する「匿名加工情報」と、ローデータから統計処理を施した集計データである「統計情報」です。また、NTTデータのケイパビリティを活かし、単なる匿名加工医療情報の提供のみならず、AIを用いた言語処理などの高度分析支援、調査支援などのサービスも行っています。
現在、二次利用サービスの対象データは49医療機関、159万人分にのぼっています。(2023年6月末時点)大学病院を始めとする大規模病院が多いデータベースの特長を元に、がんや希少疾患・難病に関するデータ数は確保されており、活用実績もこれらのスペシャリティ領域に関するものが多くなっています。一方で、一般的に症例の多い心不全や消化管領域における実態調査での利用例などもあり、幅広いニーズがあることを実感しています。

 

次世代医療基盤法の改正による
さらなる活用への期待

2017年に成立した次世代医療基盤法は、5年ごとの見直しが定められており、国会で改正法が可決、2023年5月26日に公布され、1年以内に施行予定です。
改正のポイントのひとつは、これまで提供してきた匿名加工医療情報に加え、仮名加工医療情報という枠組みが新設された点です。匿名加工医療情報では、例えば53.4kgという患者さんの体重が50-55kgとまとめられたり、希少な疾患の病名や投与薬剤はその他としてマスクされたりしていました。
仮名加工医療情報では、患者名などはもちろん加工されますが、検査値などのデータは加工せずに、希少疾病に関してもそのままの病名情報が提供できるようになり、研究への更なる活用が見込まれます。
また、ほぼすべての国民のレセプト情報や特定健診情報が収録されているナショナルデータベース(NDB)との連結も可能となる見通しです。現在「千年カルテ」に格納されているのは、大規模医療機関の情報が中心であり、例えば、街のクリニックから病院に転院してきた場合には入院までのクリニックにおけるデータは入手できず、また病院から退院するとその後のデータを追うことはできない「患者追跡性」の課題がありました。NDBと連結することで、Patient Journeyを追い、死亡情報も獲得できるようになり、研究の幅が広がることが期待されます。

図2 千年カルテ取り扱いデータ一覧

 

医療分野における社会課題を解決し
国民・社会への還元をめざす

千年カルテがめざしているのは、日本の医療高度化に貢献する多目的のデータプラットフォームであり、千年カルテを通じて医療情報の利活用が促進され、高品質な医療の早期提供や個別最適医療の促進、医療の安全性向上などとして、国民・社会に還元されることです。
今回の次世代医療基盤法の改正により、千年カルテもより利活用しやすくなることから、より多くの皆さまにご利用いただき、医療分野の課題解決に貢献していければと考えています。

 

NTTデータ

第二インダストリ統括事業本部
製薬・化学事業部
課長代理 込山 哲弘氏

「データドリブン」なアプローチで研究開発や育薬に取り組むライフサイエンス業界に対し、次世代のリアルワールドデータ”千年カルテ”により価値創出へ貢献して参ります。

お問合せ先

株式会社NTTデータ
インダストリ統括事業本部 製薬・化学事業部
込山 哲弘(こみやま あきひろ)Akihiro.Komiyama@nttdata.com