NTTアドバンステクノロジ株式会社

IPランドスケープ

IPランドスケープを活用した新たな調査サービスで、 お客様の事業戦略・技術戦略を支援

(2024年3月号掲載)

昨今、NTTグループの非通信事業分野への進出やグローバルな事業展開、さらにはオープンソースやオープンアーキテクチャの採用領域拡大などに伴い、戦略検討段階からの実践的な知財分析が求められています。IPランドスケープ※1とは、市場動向や特許の出願動向を俯瞰・分析し、技術開発・展開戦略の仮説を検証することによって、お客様の事業・サービスにおける差異化要素の発掘・分析、事業計画に内在するリスク分析と対処策の提案、中長期的観点からの次世代技術および関連プレイヤーの発掘・分析などを可能とするアプローチです。

IPランドスケープと
NTTグループを取り巻く環境の変化

IP(Intellectual Property)ランドスケープとは、広い意味では、知財を生かした経営を指します。具体的には企業の知財部門が主体となり、自社や他社の知財を中心とした情報を、市場での位置づけや競合関係を含めて統合的に分析し、戦略の切り口をグラフや模式図を使って経営陣や事業担当者に提供する活動をいいます。欧米の知財先進企業に定着しており、2017年ごろから日本企業にも広がり始めました※2、※3。
たとえばNTTグループによる非通信事業分野への進出やグローバルな事業展開では、あまり土地勘がない分野でなにが事業競争上の強みとなりうるのか、先行するプレイヤーが次にどのような差異化技術を考えているのか、など自社の事業戦略を検討するうえで徹底的な分析が必要です。これまでは調査会社による市場分析データや企業価値評価データなどにもとづく分析・判断が一般的でした。しかし、それだけではどうしても財務的分析や経営者による主観的分析の観点が強く、革新的技術によってもたらされるインパクトを的確に分析できているとは限りません。ここに知財分析の観点・手法を取り入れることで、詳細かつ具体的な技術分析にもとづく示唆や裏付けを得ることができます。これがIPランドスケープを活用する目的です。
IPランドスケープは、単にある技術領域に対して出願動向調査を行いパテントマップを作成する、という従来型の知財調査アプローチとも異なります。知財調査の手法も活用して、競合他社・市場の研究開発・経営戦略等の動向を分析し、事業戦略・技術戦略に関する仮説の検証を通して、自社の市場的・技術的ポジションについて現状の俯瞰・将来の展望を示すものです。(図1)

図1 IPランドスケープによるサービス領域の拡大

IPランドスケープを適用した調査事例

 

① 事業計画が想定するサービスの差異化要素の発掘・分析

たとえばデータセンター・クラウドインフラ事業分野の検討では、まずはグローバルなクラウド事業者の特許出願動向を、特定技術分野に限定せず広く分析しました。その結果、デジタルツインや生成AIなどのアプリケーションが複雑化・多様化する動向を受けて、「計算処理性能の向上」だけでなく、「アプリケーション開発者から見た使いやすい環境提供」(3Dレンダリング機能API、デジタルツイン用テンプレート・ライブラリ提供、ローコード・ノーコード開発フレームワークなど)での競争に技術開発のウエイトがシフトしている傾向が分かりました。
バイオマーカ技術を活用した新規事業検討では、「複数のセンサー情報や行動履歴情報を組み合わせた独自のデータ分析」に関する特許出願が活発化している傾向を分析し、差異化サービス実現に向けたデータ蓄積の重要性と事例について具体的に提言しました。

 

② 事業計画に内在するリスクの分析・特定と対処策の提案

スマートエネルギー事業分野の検討では、国内外の競合企業の特許出願動向を分析し、再生可能エネルギー取引に関する次世代技術への取り組みやM&Aを通した保有特許ポートフォリオの拡充の状況などを明らかにしました。これらの動向は、「既存技術だけに依存する事業リスク」や「将来的に包括的・市場支配的なビジネスモデルの台頭により、収益悪化・意図せぬ追加投資などにつながるリスク」に着目し、対処策の検討に資するものです。

 

③ 中長期的観点からの次世代技術および関連プレイヤーの発掘・分析と技術提携の提案

次世代データセキュリティ技術を活用した新しいセキュリティ事業の検討では、今後、クラウド事業者やデータベース事業者だけでなく、医療・ヘルスケア業界やチップベンダーなど、さまざまなプレイヤーがビジネスでの提携先・競合先となる可能性が想定されました。つまり自社技術の強み(かどうかさえ不明)を分析する以前に、これらのプレイヤーがどういう思惑で技術開発を進めているのかを、まずはできるだけ的確に把握する必要がありました。特許出願動向を時間軸に沿って分析することは、このような将来技術投資の動向をあぶり出すために有効な手段の一つです。(図2)

図2 AI特許解析システムXLSCOUTによるバイオマーカー関連スタートアップの出願特許分析

 

知財専門家の守備範囲を超越した人材、
知財分析の手法を駆使する事業戦略の専門人材

既述のとおり、IPランドスケープを駆使するには、事業戦略や開発内容を理解できることが条件になります。マーケティングのアイデアやセンスも必要です。NTTアドバンステクノロジ株式会社(以下、NTT-AT)では、従来の知財の専門家の守備範囲を超越し、より大きな事業フィールドを俯瞰できる人材を育成しています。
一方で事業戦略部門でも、あるいは特許・著作権等に係る係争が発生しやすいビジネスインキュベーション活動でも、IPランドスケープを使った分析ができる人材は必要とされています。なぜならIPランドスケープのアプローチを使う目的は、あくまで事業戦略・技術開発戦略の策定だからです。
そう考えると、われわれ知財ビジネスに携わるものが取り組むべきは、最終的にはこの手法を事業戦略部門が自ら駆使できるようになるお手伝いだと考えます。実際に、最近の特許解析ツール※4はAI機能を駆使することで、知財業務の深い知識・経験を必要とせずに、従来に比べ広範かつ迅速に出願動向を分析することができるようになっています。
NTT-ATは、知財のみならず技術にもサービスにも精通するエキスパート集団として、このように従来の知財専門サービスの領域を超えた新しいお客様支援を展開しています。

※1 「IPランドスケープ」は、正林国際特許事務所所長 正林真之弁理士の登録商標です。
※2 日本経済新聞(2019年12月11日)
※3 日本特許庁「企業の知財戦略の変化や産業構造変革等に適応した知財人材スキル標準のあり方に関する調査研究報告書」
※4 AI特許解析システムXLSCOUT (https://xlscout.ai/)

 

NTTアドバンステクノロジ株式会社
IPES事業部
IP調査分析ビジネスユニット
ビジネスユニット長 石打 智美 氏

 

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お問合せ先

NTTアドバンステクノロジ株式会社 IPES事業部 https://www.ntt-at.co.jp/product/list_list_ip01.html