NTTアドバンステクノロジ株式会社

GaN

GaNデバイスを搭載したソリューションで 脱炭素社会の早期実現に貢献

(2023年10月号掲載)

GaN(窒化ガリウム)は、化合物半導体の一種で、Si(シリコン)と同様に、ダイオードやトランジスタなどの半導体デバイスを作製するために使用できます。しかも、Siと比べて、導通損失の低減・スイッチング損失が低減されるため省電力が可能となり、脱炭素社会の実現に貢献できるとして、注目を集めています。
こうした背景の下、NTTアドバンステクノロジ株式会社(以下、NTT-AT)は、NTT研究所の開発したエピタキシャルウェハ(以下、エピ基板)を応用し、さまざまな取り組みを推進しています。

GaNの特長とパワーデバイスとしての期待

家電製品から電気自動車やデータセンタなどでの電力変換などに用いられている直流・交流変換器には、Siのパワーデバイスが使われていますが、GaNは大きな電圧に耐えうる性能(耐圧)がSiの10倍も高く、また、同じ耐圧で比べた場合、電気を流したときの抵抗が小さくなります。たとえば、GaNを直流・交流変換器に使用すれば、エネルギー損失を大幅に減らすことが可能です。
GaNを用いたデバイスは、低損失だけでなく、数GHz〜数十GHzの高周波領域に対応する高速動作が可能、他の新材料と比較してAs(ヒ素)やP(リン)を使わず環境に優しい、といった特長も有することから、高周波動作を含む、次世代のパワーデバイスとして期待されています。

図1 GaNデバイスを搭載したソリューション

GaNデバイスを搭載したソリューション

NTT-ATは、NTT研究所の開発したエピ基板※1を応用し、GaNデバイスを搭載したソリューションの推進に取り組んでいます(図1)。以下に、2つの例について紹介します。

【ソリューション例1】
USB急速充電器の開発・提供

NTT-ATは、GaN FET(Field Effect Transistor:電界効果トランジスタ)を搭載したUSB充電器を開発・提供しています(図2)。本製品は、GaN未使用品と比べ軽量で小型なため、電子機器を持ち歩く際にも便利。USBポートに対応しており、本製品1台でスマートフォン・タブレット端末・ノートパソコンなどを素早く充電することが可能です。NTT-ATCRオンラインサイトから購入することができます。

■GaN FET搭載のUSB充電器の特長

①スマホ・タブレットへの急速充電
通常の5W充電器に比べ、最大3倍の速さで充電します※2。また、PPS※3対応のスマホをフルスピードで充電します。
②約60%のサイズのコンパクト設定
一般的な65W出力の充電器に比べて、約60%小型化。プラグは折りたたみ可能。かさばらないので、気軽に持ち運べます。
③2つのポートで2台同時に急速充電
USB・PD対応ポートを2つ搭載。スマホ、タブレット、ノートPCなど2台を同時に充電できます※4。

図2 GaN FETを使用したUSB充電器

【ソリューション例2】
LED街灯電源の省電力化実証実験

ナトリウム街灯からLED街灯に交換すると年間の消費電力を削減できることは広く知られていますが、LED街灯にGaNデバイスを搭載した電源を使用することで、さらに高い電力削減効果を得られると考えられます。
NTT-ATは、これを実証するため、通常の電源とGaN FETを搭載した電源の消費電力を比較する実験を行いました。既設のナトリウム街灯を、①通常のLED街灯、②GaN FETを搭載した電源を使用しているLED街灯に交換して比較した結果、GaN FET 搭載電源は通常の電源よりも消費電力が低いことを確認しました(図3)。さらに、夜間の照度を下げる調光制御を行うことで、ナトリウム街灯と比べて36.2%の消費電力削減を確認しました。

■GaN搭載 電源ユニット LED街灯の特長

①電力消費を大幅削減
GaNデバイスはエネルギー変換効率が高いため、従来の街灯用電源と置換することにより消費電力を削減します。
②照明の集中コントロール
DALI※5規格対応で、照明の集中管理が可能です。無駄な点灯を削減して省エネ効果向上を実現します。
③サービスの拡張性
照明の明るさコントロールやセキュリティ機能搭載など、サービスの拡張に柔軟に対応できます。

図3 GaN FET搭載電源を用いたLED街灯と実験結果
(70cmの位置で測定)

今後の展開

NTT-ATは、「LED街灯+GaN電源」に加え、明るい時間帯には消灯する、人が通った時だけ点灯させるなど状況に応じて調光するモーションセンサを併用することで、実証実験で得られた36.2%以上の消費電力削減が見込めると考えています。既にLED街灯を導入している自治体、工場の敷地や商業施設においても、「LED街灯+GaN電源+コントローラ」に置き換えることでさらに電力を削減し、単純なLED照明への置き換えから一歩進んだCO2削減施策が可能となります。NTT-ATは今後もGaN応用製品を通じ、脱炭素社会の早期実現に貢献していきます。

※1 GaN(窒化ガリウム)、Si(シリコン)、Al2O3(サファイア)、SiC(シリコンカーバイト)等の各基板上に結晶成長する技術を有しており、窒化物系に使われるすべての基板に対応。
※2 iPhone12を0%から30分充電した場合での比較
※3 PPS:Programmable Powe Supply(バッテリーの長寿命化を可能とした高速充電機能) 
※4 各端末用のケーブルが必要
※5 DALI:Digital Addressable Lighting Interface 照明制御の国際標準規格

NTTアドバンステクノロジ株式会社
グリーン&プロダクト・イノベーション事業本部
(左)担当課長 小西 敏文氏
(中)ビジネスユニット長 小平 徹氏
(右)副主任技師 平塚 雄三氏

 

本記事でご紹介した他にも携帯基地局用パワーデバイス・車載用パワーデバイス・家電用パワーデバイス・耐環境デバイス等への適用ソリューションを提供しています。お気軽にお問い合わせください。

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NTT アドバンステクノロジ株式会社 グリーン&プロダクト・イノベーション事業本部
https://keytech.ntt-at.co.jp/epi/prd_1002.html