データを活用し、低所得者の資金調達促進

Global Mobility Service 株式会社(略称:GMS)は日本に本社を構えASEAN各国にIoT技術を活用したFinTechサービス展開するMobility×IoT×FinTech領域のスタートアップである。NTTデータ主催「第8回豊洲の港から®presentsグローバルオープンイノベーションコンテスト」で最優秀賞を獲得した。

GMS社は従来ローン審査に通過できない低所得の人々が、ローンを組んで車両を購入できるFinTechサービスを、日本、フィリピン、カンボジア、インドネシアのタクシー事業者などに向けて提供している。

世界にはタクシーや物流等の仕事に就業すべく、金融機関等のローンやリースを活用して車を入手したくても与信審査を通過できないために車を購入できない人が20億人いると言われている。もしそれらの人たちがローンを使えるようになれば、1人当たり100万円を借りるとしても、2000兆円という大規模なマーケットになる。

GMS社は独自開発したGPS搭載のIoTデバイス「MCCS(Mobility-Cloud Connection System)」を車に装着し、月額料金が支払えなければ遠隔制御によってエンジンをかからなくする仕組み(走行中にエンジンが停止するということはない)を実現した。

この仕組みを使うことで、GMS社のFinTechサービスはさまざまなステークホルダーに価値を創出している。

①金融機関へは、これまで貸すことができなかった顧客層の開拓による新たな貸高の創出

②自動車メーカーや車両販売店へは、これまで売ることができなかった顧客への販売機会の創出

③ローン・リース契約者には、車の購入機会のみならず、車を活用したタクシー等への就業機会をも創出

上述のとおり、「三方良し」の新市場創出を実現するビジネルモデルを確立している(図1)。

図1 GMSが提供する価値(Source: GMS社)

GMS社はこれまで経済合理性で解決できなかった社会課題を、テクノロジーと巻き込み力をもって、多くの金融機関との提携を果たし、イノベーションを可能にしてきた会社である。2030年までの国際目標であるSDGsの達成に向け、もっとも実績を積み上げてきている企業の一つである

同社はモビリティサービスプラットフォーム(MSPF)によりデバイスから収集する多様な情報を価値化し、二次活用することで、モビリティの新たなあり方を創造しようとしている。具体的には、

・Open APIを実装し金融機関を始め各企業とのシームレスな連携を可能にすることで、与信補強を行うローン・リースパッケージのスムーズな立ち上げ

・AIの活用による収集情報の分析・解析(図2)

・多様なサービスベンダーのアプリケーションのプラットフォームとの連携

などにより、革新的なモビリティサービスを追求している。

図2 GMSがプラットフォームに収集するデータ(Source: GMS社)

AIがソフトウェア産業に与えるインパクト(update)

昨年10月号から本テーマを執筆してきたが、AI市場の動きは速く、寄稿後しばらくすると新たな動きが次々と現れた。

例えばAI技術者獲得戦は米国大手IT企業だけでなく、コンサルティング会社や各産業のリーディング企業も名乗りを上げて、全米主要都市で大量求人の動きがある。

旺盛なAI技術者ニーズがあるので、自身のAIスキルを高めて良い条件の求人を探す動きが世界各地で広がっている。

また、AIインテグレーションのアウトソーシングを請け負う企業も立ち上がってきているので、サービス・ソリューションにAIを適用する場合の技術者リソースの選択肢が広がってきた。

社会課題解決に向けて〜 AIとオープンイノベーションの役割

NTTデータの「豊洲の港からグローバルオープンイノベーションビジネスコンテスト」は、NTTデータグループが提供するサービス・ソリューションとスタートアップ企業のサービス・ソリューションが掛け合わさることで、SDGs(世界17の課題)を解決し新しい世界のプラットフォームとなるような、イノベーティブなビッグビジネスの提案を募集している。

第9回のコンテストは、2018年12月から世界20都市で各地選考会が行われている。既に選考会が終わった各都市の最優秀賞とSDGs賞受賞企業の顔ぶれを見ると、提案ソリューションの中にAIを組み込んでいる企業が相当数ある(表1)。

表1 第9回グローバルオープンイノベーションビジネスコンテスト各地選考会の優勝・SDGs賞企業

社会課題解決を目論むスタートアップにとって、ソリューションの強みを増すために、AIが強力な武器になってきているということなのであろう。

2030年に向けて、ソフトウェア産業に属する弊社が①食品・農業、②都市、③エネルギー・材料、④健康・福祉などの分野において市場機会を得るためには、オープンイノベーションの仕組みを継続・発展させていき、併せてAIの適用・実装能力も伸ばしていくことが重要になるだろう。

“さあ、ともに世界を変えていこう!”

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