4. One-Stop AI Shopとの共創
技術革新統括本部 技術開発本部
Technology Strategist 遠藤 宏
AIを業務の中に取り込もうという動きが高まっているが、実装にあたってはAIを使いこなせる人材を含めてプロジェクトを編成する必要がある。適切な人材を配置できないなど社内リソースだけで編成できない場合も多いので、AIがわかる信頼できる委託先がいてほしいと思うのは必然である。今般、One-Stop AI Shopとの共創事例が出てきたので紹介したい。
インドのAI技術者の急増
「LinkedInのレポート（2018年9月）でAI技術者のスキルレベルは米国、中国、インドがトップ3となっている」と各種メディアが報じている。ソフトウェア開発のアウトソーシング受託ビジネスで首位に立つインドが、AI分野でも急速に立ち上がっている。
世界的にAI技術者不足と言われる中、ITサービスの企画開発・運用にあたり、AIを適用することが有効と思われる工程・箇所について、コンサルティング、設計・構築、運用も含めてケースバイケースで技術者を提供してくれる企業の登場・存在はAIインテグレーションの現場ではありがたい存在である。
One-Stop AI Shop各社
今回はインドのプネに本拠を置くDeepTek社並びに同社のパートナー会社として一体的に活動しているAlgoAnalytics社及びAsquared IoT社を紹介する。まだあまり広まっていないが、One-Stop AI Shopという概念の事業者になる。
（1）DeepTek社
DeepTek社は、データサイエンティスト及び医療分野のドメインエキスパートが、①汎用的なAI関連サービス及び②AIを活用した医療画像診断関連サービスを提供している。AI技術者、医療専門家、医療画像診断、病院でのバリデーション（適格性評価）はインドが優位性を持つ領域であり、AIソリューションを低コストで構築できることが売りである（図１）。
（2）AlgoAnalytics社
また、AlgoAnalytics社は、データサイエンティスト及びBFSI（Banking, Financial Services and Insurance）、製造、小売、ヘルスケアなどのドメインエキスパートを抱え、プロセスオートメーションや自動テキスト化を含め、AIを活用したサービスを幅広く提供している。
（3）Asquared IoT社
さらに、Asquared IoT社はデータサイエンティスト及び製造のドメインエキスパートを揃えている。製造工場の不具合箇所を発見するにあたり、サウンド分析とビデオ分析による非接触・非侵入検知を実現している。工場内のフライス盤・モーターなどのリアルタイムモニタリングやメンテナンス予測、ビル建設におけるリアルタイムモニタリングと異常検出、空気/ガス漏れのリアルタイム検出などの実績がある。
つまりこれら3 社は、データ分析ができマーケティングに繋げられるデータサイエンティストと各分野の専門知識を持つドメインエキスパートが一体となって、新たなサービスの目的・課題やデータ活用方法などを明確にし、AIを活用しながら 事業を営んでいるわけである。
大手クラウドサービスの中で提供されているAIや有力スタートアップが提供しているAIは汎用的ではあるが、個別の業務案件に適用する際には業種毎・案件毎のカスタマイズが必要となることも多く、そうした場合はドメインエキスパートの存在が欠かせない。また、どの国・地域でサービスをするかにより、ローカライズや現地対応するリソースを確保する必要がある。
One-Stop AI Shopは上述のような「実装にあたっての対応」を支援する概念が含まれている。
以下、NTTデータグループ各社がDeepTek社と連携（一部の工程はAlgoAnalytics社とも連携）した事例を紹介する。
文字読み取りの認識率向上
NTT DATA APACが担当した車両登録証やナンバープレートの写真やスキャンデータを文字認識する業務案件において、何も加工しないデータをサードパーティが提供するOCR（光学的文字認識）エンジンに読ませた場合の認識率は80％程度であった。DeepTek社はこの文字読み取り結果を学習し、解像度・角度・照度の調整などを行う前処理アプリケーションソフトウェアを開発し、これをOCRエンジンと組み合わせることにより実用に耐え得る95％程度の認識率にまで上げることができた（図2）。
インド医療機関でのAI画像診断支援の実証実験
NTTデータ及びNTT DATA Services（北米子会社）は、DeepTek社と連携し、Deenanath Mangeshkar病院（読み：ディーナナス・マンゲッシュカー）にてAI画像診断支援ソリューションの実証実験を実施した。
本ソリューションは、患者の医療画像から重篤な疾病をAIで分析し、放射線科医の診断を支援するもので、脳出血をはじめとした12種類の疾病に対応している。肺気腫を対象にCT画像を使って行い、より多くの患者検出に貢献することを確認した(図3)。
本実証に際してDeepTek社は現地対応などを担当した。
One-Stop AI Shopとの共創によるAI実装の加速化
これらの事例は、自らAIソリューションを創る力を持つと同時に、他社のAIソリューションと組み合わせて統合AIソリューションに仕上げていく共創活動ということになる。
One-Stop AI Shopとの共創によって、AIの実装が迅速に進んでいくことを期待したい。
＜お問い合わせ先＞
endouhr@nttdata.co.jp
