NTTデータ
技術開発本部
副本部長
山本修一郎
概要
前回はコミュニケーションの成立条件や会話とはなにかについて、Winogradの会話構造モデルに従って様々な会話のやりとりが表現できることを紹介した[1][2]。今回は組織におけるコミュニケーションについて会話の受け手の視点から考えてみる。
たとえば「コミュニケーションがうまくとれていなかった」原因には、受け手がコミュニケーションの内容を理解しない、無視する、拒否する、反論するなどの断絶があるだろう。もし送り手と受け手の間でこのような断絶があいまいなまま相互に認識されず、放置されれば、はじめはいい雰囲気でコミュニケーションがとれていると思っていても、ある日突然、受け手から問題点を指摘され、どうしてこうなったんだろうと、とまどうことが多いものである。
組織内コミュニケーション
言語行為展望論(Language Action Perspective Theory)で紹介したように、会話には将来の行為への約束(コミットメント、Commitment)を形成するための基本的な構造があると考える[1][2]。
組織内のコミュニケーションも同様だと思われる。ドラッカーは、組織内コミュニケーションでは、まず受け手が送り手の情報を知覚すること、受け手が期待することと知覚したこととが一致していることで、受け手の行動に始めて送り手が関与できると指摘している[3]。したがって、組織内コミュニケーションでは、知覚すること、期待すること、関与することが重要であり、これらを達成するために送り手と受け手における情報の相互理解が必要になる。
このコミュニケーションの構造を、会話構造モデルで表現すると図1のようになる。送り手が何かを受け手に依頼する。受け手はその内容を理解するための質問を送り手に発する。送り手は受け手が理解できるまでこのコミュニケーションを継続する。

図1 組織内コミュニケーションの会話構造
受け手が送り手の依頼内容を理解できなければ、依頼を拒否することでコミュニケーションが停止する。受け手が送り手の依頼内容を知覚できれば、今度はその内容が受け手側の期待することと一致しているかどうかについてのコミュニケーションが始まる。もし期待通りでなければ、受け手は送り手に要望を提案する。もし要望が受け入れられなければ、依頼に対して受け手が不満であることを表明して、コミュニケーションが停止する。もし受け手が送り手の依頼内容と要望への回答に満足できれば、それに了解したことを送り手に伝えて、送り手の依頼に応じて行動する。これにより送り手は受け手の行動に関与できることになるわけである。
知覚すること
コミュニケーションでは受け手が置かれた場の状況を理解して、知覚できる範囲を送り手が認識する必要がある。受け手が理解できない内容を送り手が依頼してもコミュニケーションの断絶は解消できないだろう。言語行為展望論では、このような断絶を会話のブレイクダウンといった。
コミュニケーションとは受け手の行為なのである。送り手が一方的に意見や命令を押し付けても受け手に無視されたら、コミュニケーションは成立しないからである。
期待すること
コミュニケーションでは、受け手が期待していることを知覚するものである。期待通りのことであれば受け手も理解しやすいが、期待を裏切る内容を提示されれば、受け手はまったく理解できないという態度を示すか、無視することになるだろう。視覚でも同じだ。見たいものを見る傾向があるので、実は見えていても感心がないか、不快なものは見ないようにする本能が人間にはあるようだ。したがって、受け手が知覚するものと受け手が期待しているものとが異なる可能性があること、もし異なっていればそれを明確に受け手に理解してもらうことが重要だ。この断絶を受け手が認識するところから、新たなコミュニケーションが始まる。
関与すること
コミュニケーションでは、送り手の依頼に対して受け手がそれを理解し、送り手を信じて受け手に行動して欲しいという送り手の願望がある。言い換えれば、送り手の願望や価値観を受け手が受容して行動すれば送り手によるコミュニケーションの目的は達成されることになる。その逆に、受け手が送り手の願望を拒絶したり、抵抗すれば送り手の目的は達成できないことになるので、コミュニケーションを継続するか中断することになる。
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- 2:第12回要求工学国際会議 RE2004
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- 20:ソフトシステム方法論 再考(その1)
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