(前NTTデータ フェロー システム科学研究所長)山本 修一郎
今回は、本連載第23回で紹介した非機能要求について、アーキテクチャとの関係について考える。まず、アーキテクチャの基本概念と、SEIのATAM(Architecture Tradeoff Analysis Method)で用いられる品質特性シナリオを紹介する。次に前回紹介した運用要求の定義方法を品質特性シナリオに適用できることを示すとともに、非機能要求の矛盾に基づくアーキテクチャ設計手法についても紹介する。
ソフトウェアアーキテクチャの要素
ソフトウェアアーキテクチャの構成要素を表1に示す。
ソフトウェアアーキテクチャの構成要素を表1に示す。
ソフトウェアアーキテクチャの構成要素には、
①ソフトウェアを構成する要素
②ソフトウェア構成要素が満たすと想定できる特性
③ソフトウェア構成要素間の関係
がある[1]。
ここで、ソフトウェア構成要素が満たす特性には、機能要求と非機能要求がある。この定義の重要な点は、ソフトウェアアーキテクチャが構成要素とそれらの関係だけではなく、構成要素が満たすべき特性もアーキテクチャでは明示する必要があるとしている点である。この理由は、構成要素の特性が定義されていないと、アーキテクチャの妥当性を確認できないからである。
非機能要求の種類
非機能要求には、次の3つのレベルがある。
①機能レベル:特定の機能に対する特性
②システムレベル:特定のシステム全体で満たす必要のある特性
③複合システムレベル:複数のシステムが満たすべき特性
機能レベルの非機能要求の例としては、計算効率やメモリ効率がある。システムレベルの非機能要求の例には、可用性や柔軟性、正確性などがある。複合システムレベルの非機能要求には、相互連携性、データ連携性、全体最適性などがある。
システムレベルや複合システムレベルの非機能要求を満たすために、必要となるソフトウェア構成要素として、データウェアハウスなどがある。このような構成要素の機能は、非機能要求を前提としていることになる。逆に言えば、非機能要求からアーキテクチャの構成要素とその特性としての機能を設計できることになる。
システムに対する非機能要求を達成するためには、そのためのアーキテクチャ上の判断が必要となる。もし、非機能要求からアーキテクチャ上の決定を導くことができれば、アーキテクチャの構成要素を合理的に抽出できる。
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- 60:要求とアーキテクチャ
- 61:要求と保守・運用
- 62:オープンソースソフトウェアと要求
- 63:要求工学のオープンな演習の試み
- 64:Web2.0と要求管理
- 65:ソフト製品開発の要求コミュニケーション
- 66:フィードバック型V字モデル
- 67:日本の要求定義の現状と要求工学への期待
- 68:活動理論と要求
- 69:ビジネスゴールと要求
- 緊急:今、なぜ第三者検証が必要か
- 71:BABOK2.0の知識構成
- 72:比較要求モデル論
- 73:第18回要求工学国際会議
- 74:クラウド時代の要求
- 75:運用要求定義
- 76:非機能要求とアーキテクチャ
- 77:バランス・スコアカードの本質
- 78:ゴール指向で考える競争戦略ストーリー
- 79:要求変化
- 80:物語指向要求記述
- 81:要求テンプレート
- 82:移行要求
- 83:要求抽出コミュニケーション
- 84:要求の構造化
- 85:アーキテクチャ設計のための要求定義
- 86:BABOKとREBOK
- 87:要求文の曖昧さの摘出法
- 88:システムとソフトウェアの保証ケースの動向
- 89:保証ケースのためのリスク分析手法
- 90:サービス保証ケース手法
- 91:保証ケースのレビュ手法
- 92:要求工学手法の再利用
- 93:SysML要求図をGSNと比較する
- 94:保証ケース作成上の落とし穴
- 95:ISO 26262に基づく安全性ケースの適用事例
- 96:大規模複雑なITシステムの要求
- 97:要求の創造
- 98:アーキテクチャと要求
- 99:保証ケース議論分解パターン
- 100:保証ケースの議論分解パターン[応用編]
- 101:要求発展型開発プロセスの事例
- 102:参照モデルに対する保証ケース
- 103:参SEMATの概要
- 104:参SEMATの活用
- 105:SEMATと保証ケース
- 106:Assure 2013の概要
- 107:要求の完全性
- 108:要求に基づくテストの十分性
- 109:システムの安全検証知識体系
- 110:機能要求の分類
- 111:IREB
- 112:IREB要求の抽出・確認・管理
- 113:IREB要求の文書化
- 114:安全要求の分析
- 115:Archimate 2.0のゴール指向要求
- 116:ゴール指向要求モデルの保証手法
- 117:要求テンプレートに基づく要求の作成手法
- 118:ビジネスゴールのテンプレート
- 119:持続可能性要求
- 120:操作性要求
- 121:安全性証跡の追跡性
- 122:要求仕様の保証性
- 123:システミグラムとドメインクラス図
- 124:機能的操作特性
- 125:セキュリティ要求管理
- 126:ソフトウェアプロダクトライン要求
- 127:システミグラムと安全分析
- 128:ITモダナイゼーションとITイノベーションにおける要求合意
- 129:ビジネスモデルに基づく要求
- 130:ビジネスゴール構造化記法
- 131:保証ケース導入上の課題
- 132:要求のまとめ方
- 133:要求整理学
- 134:要求分析手法の適切性
- 135:CROS法の適用例
- 136:保証ケース作成支援ツールの概要