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ICTソリューション総合誌 月刊ビジネスコミュニケーション

ビジネスコミュニケーション
第109回 システムの安全検証知識体系国立大学法人 名古屋大学 情報連携統括本部 情報戦略室 教授 山本修一郎

国立大学法人 名古屋大学 情報連携統括本部 情報戦略室 教授
(前NTTデータ フェロー システム科学研究所長)山本 修一郎

非機能要求については、IEEE std.830などに代表されるように多くの分類が提案されている。しかし、機能要求の分類についてはあまり報告されていないようである。そこで今回は、2013年11月に米国Pasadenaで開催された国際会議ISSRE2013で報告された機能要求の分類事例と、機能要求項目間の関係を再利用する試み[1]について聴講してきたので紹介したい。

機能要求の分類

Ghazarianは、15個のエンタープライズ系情報システムの機能要求を調査することにより12種類に分類できることを明らかにした[2]。

調査対象システムが持つユースケースと機能要求の関係は次のようである。調査対象となった15システムには、171ユースケース、1217個の機能要求があった。また、平均7.12個の機能要求が1個のユースケースに含まれていた。したがって、システムあたり11.4個のユースケース、81.13個の機能要求があったことになる。

表1 機能要求の分類(クリックで拡大)

表1 機能要求の分類

Ghazarianによる機能要求の分類を表1に示した。この表では、12個の機能要求種別を、表示層、応用層、データ層、外部層に分類して筆者が整理している。表示層には、イベント処理、ユーザインタフェース、データ入出力についての機能要求がある。ユーザインタフェース関連の機能要求には、静的記述、画面遷移、動的振舞についての機能要求がある。イベント処理は、ユーザインタフェース操作の契機を与えている機能要求である。データ入出力についての機能要求には、データ入力機能要求、入力データの妥当性確認機能要求、データ出力機能要求がある。応用層とデータ層は、それぞれビジネス論理とデータベース操作についての機能要求がある。なお、本稿ではわかりやすくするためデータベース操作としたが、GhazarianはData Persistenceとして分類している。また外部操作には、外部動作、外部入出力、通信がある。このように整理してみると、この分類が無理のない自然な分類であることが分かる。

この機能要求についての分類間の関係を図1に示した。図1から分かるように、データ入力、データ妥当性確認、データ出力は、表示層と応用層の相互作用を担う機能要求であることから、応用層に分類することもできるかもしれない。なお、図1では、Ghazarianが高い頻度で出現するとした機能要求である、イベント、データ入力、データ出力、ビジネス論理、データベース操作を、記号「*」で示している。

図1 機能要求分類項目間の関係

図1 機能要求分類項目間の関係(クリックで拡大)

機能要求分類の出現頻度

Ghazarianによる調査では、機能要求分類の出現頻度を層別に比較すると、図2に示すようになっている。表示層機能要求が約72%で残りの約28%が応用層、データ層、外部層となっている。この結果から、米国でも要求定義では表示層の割合がほとんどといってよいことが分かる。ただし、図1で示したように、データ入力、データ出力、データ妥当性確認を応用層に分類すると、この3項目で47.23%なので、応用層が59.23%とになって、最も多くなることを注意しておく。

図2 機能要求分類の層別比率

図2 機能要求分類の層別比率

次に、層別分類ではなく、機能要求項目ごとに、出現頻度の多い順に整列した結果を図3に示した。この結果から、機能要求項目の上位5項目で機能要求記述の85%になることが分かる。

この上位5項目の高頻度要求が調査対象となった15システムで、それぞれ、機能要求記述のうちでどの程度記述されていたかを示した結果が図4である。この図の横軸は要求項目数で縦軸が5項目の高頻度機能要求の比率である。この結果を見ると、高頻度要求の比率は70%~100%の範囲にあることが分かる。高頻度要求だけで要求が記述されたシステムが1件あることが興味深い。

図3 機能要求分類項目の出現頻度

図3 機能要求分類項目の出現頻度(クリックで拡大)

図4 高頻度要求の比率

図4 高頻度要求の比率(クリックで拡大)



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