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ICTソリューション総合誌 月刊ビジネスコミュニケーション

ビジネスコミュニケーション
第78回 ゴール指向で考える競争戦略ストーリー国立大学法人 名古屋大学 情報連携統括本部 情報戦略室 教授 山本修一郎

国立大学法人 名古屋大学 情報連携統括本部 情報戦略室 教授
(前NTTデータ フェロー システム科学研究所長)山本 修一郎

5月11日に開催される第20回ソフトウェア開発環境展(SODEC)で「要求・要件定義の新しい潮流」というセッションで話すことになった。このセッションでは、日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)の細川泰秀さんも話される。私の講演では「要件定義の最新トレンド~運用と安全性の定義に向けて~」について話すことにしている[1]

細川さんとは、今年の3月に開催された第5回要求シンポジウム[2]でもご一緒した。そのときに私が話したポイントは、要求工学で変化しないことは、「要求が変化する」ということというものだった。その時は時間的な制約もあり、なぜ変化するのかという原因については詳しく述べることができなかった。SODECの講演では、そのあたりについても話す予定だ。そこで今回は、要求変化の分類とその原因について考えてみる。

まず、システムの類型について復習する。次いで、要求変化を目的と環境の変化の視点から4種類に分類する。また、要求変化の構造を明らかにする。最後に要求変化に対応するための留意点として、要求の階層的な構成方法を紹介する。

システムの類型

Lehmanはソフトウェアやシステムを次のような3つの型に分類した[3]

◆S型

問題と仕様を形式的に定義できるソフトウェア。たとえば、最小公倍数を求めることは形式的に定義できる。

◆P型

問題は明確に定義できるが、近似解としての仕様しか定義できないようなソフトウェア。たとえば将棋や天気予報などは、完全なアルゴリズムを定義することはできず、改良が続いていく。

◆E型

人間活動システムに組み込まれ、その一部として機能するソフトウェア。たとえばOS、航空管制システム、ビジネス情報システムなどは運用環境に埋め込まれるので、図1に示したように人間行動の変化によって前提条件となる問題が変化してしまう。図1では、ビジネス環境の中での人間行動が対象とする前提条件が、情報システムとの間に追跡性があること、したがって前提条件が変化することで、情報システムにも変化が求められるという関係を示している。つまり情報システムには、環境や人間行動についての前提条件が埋め込まれている点に注意する必要がある。

ところで、細川さんの今回のSODECの講演題目は「ビジネス・イノベーション実現のための要求定義」だ。

ITによるビジネス・イノベーションを考える上では、現実世界のビジネスでITが運用されることで獲得される運用情報やITを運用する社員の声、ビジネスを利用する顧客の声から、システム環境の変化の兆候と、想定していたビジネス・ゴールとを比較することが重要だろう。

また、システム開発リスクやシステム運用リスクはE型システムの要求変化がもたらすものであり、要求変化が発生することを前提に考える必要があるだけでなく、要求変化を新たなビジネス機会として積極的に捉えることができれば、ビジネス・イノベーションを生むことができる。

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第59回以前は要求工学目次をご覧下さい。


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