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ICTソリューション総合誌 月刊ビジネスコミュニケーション

ビジネスコミュニケーション
第130回 ビジネスゴール構造化記法国立大学法人 名古屋大学 情報連携統括本部 情報戦略室 教授 山本修一郎

国立大学法人 名古屋大学 情報連携統括本部 情報戦略室 教授
(前NTTデータ フェロー システム科学研究所長)山本 修一郎

先日、GSN(Goal Structuring Notation)の導入を考えている企業の方々と意見交換した。そこで、「GSNでビジネスゴールと戦略を記述したところ、複雑になってしまった。なにかいい方法はないか」という質問をいただいた。そのGSNを拝見したところ、GSNの戦略ノードを用いてビジネスゴールの実現手段としてのビジネス戦略が記述されていた。本来の使い方ではないが、なかなかいい点をついていると感心した。前回も紹介したBSC (Balanced Score Card)もビジネスゴールを木構造で分解できることから、GSNでもビジネスゴールを構造化して表現するというニーズがあると思われる。

本稿では、この考察から得た着想に基づいて、筆者が考案したGSNに基づくBGSN(Business Goal Structuring Notation)を紹介する。また、BSCとBGSNを比較することにしよう。

BGSN

BGSNではGSNと同じ構造で、ビジネスゴールを戦略ノードで下位のビジネスゴールに分解する。このとき、コンテクストノードで、視点や活動手順、問題状況などゴール分解の理由を記述する。最下位の主張では、ビジネスゴールの重要成功要因(CSF)を記述し、CSFを達成するための主要評価指標(KPI)の値に関する実績を証拠ノードで記述する。

このように、BGSNでは、GSNの表記法をそのまま用いるとともに、ノードの記述内容をビジネスゴールに適応させている。

BGSNの記述例を図1に示した。このBGSNでは、「顧客に価値を提供し、従業員や株主の価値を創造し、最高の業務プロセスを通じて最高の製品を提供する」という企業のビジネスゴールを頂点として、それを達成する取り組みを説明している。

まず、①株主、②顧客、③業務プロセス、④従業員からなる4視点で頂点のビジネスゴールを4個の下位ゴール、①株主に価値を創造している、②顧客に焦点化している、③高い品質の製品を効率的に生産している、④従業員の価値を創造しているに分解している。次に、これらの下位ゴールを重要成功要因に対する指標に基づいて、さらに下位のゴールに分解している。

たとえば、「株主に価値を創造している」の重要成功要因に対して、資本利益率、固定費、製品在庫という3個の指標が割り当てられているので、①資本利益率の向上、②固定費の低減、③製品在庫の削減という3個の下位ゴールを作成している。これらの最下位ゴールに対して、対応する指標の実績値によって、ゴールが達成されていることを確認することができる。

なお、この例では、視点として、①株主、②顧客、③業務プロセス、④従業員を用いた。もちろん、財務、顧客、業務プロセス、学習と成長という標準的なBSCの4視点を用いてBGSNを作成することができる。

以下では、前回も紹介したBSCとGQM-戦略技法について、もう一度簡単に説明して、これらとBGSNを比較することにしよう。

図1 BGSNの例

図1 BGSNの例(クリックで拡大)

BSC

バランス・スコアカード(BSC)は戦略マップと業績評価指標を用いて企業の経営戦略を分析することができる[1]。財務、顧客、業務プロセス、学習と成長(イノベーション)という4つの視点から多面的に立案、実行、評価していくためのゴール分解にもとづくフレームワークが戦略マップである。BSCでは、財務の視点から見た戦略目標を最上位のゴールとして、このゴールを達成するための顧客視点のゴール、顧客視点のゴールを達成するための業務プロセスのアクションとしてのゴール、業務プロセスのゴールを達成するための学習と成長のためのゴールに戦略マップを用いて段階的に分解していく。またこれらのゴールを達成するための活動の業績評価指標としての重要成功要因(CSF, Critical Success Factor)とその定量評価項目KPIを用意している。ゴールの最終的な達成状況を監視するためにKPI(Key Performance Indicator)を設定する。

上述した図1から、視点分解によってBSCをBGSNで表現することができることは明らかである。ただし、4つの視点間に依存関係があるBSCの場合には、より詳細な検討が必要となることがある。

図2 BSCによる戦略目標の設定例

図2 BSCによる戦略目標の設定例(クリックで拡大)



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