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ICTソリューション総合誌 月刊ビジネスコミュニケーション

ビジネスコミュニケーション
第81回 要求テンプレート国立大学法人 名古屋大学 情報連携統括本部 情報戦略室 教授 山本修一郎

国立大学法人 名古屋大学 情報連携統括本部 情報戦略室 教授
(前NTTデータ フェロー システム科学研究所長)山本 修一郎

今回は、ロールスロイス社のMarvinらが提案している安全要求を自然言語で記述するためのEARS(Easy Approach to Requirements Syntax、要求定義のための簡易構文)テンプレートを紹介する[1][2]

この方法は、要求定義の専門家ではない発注者(ステークホルダ)が5種類のテンプレート構文を用いることにより、自然言語による要求定義が持つ曖昧性や検証不能性などの多様な問題を回避できるように考案されたものである。Marvinらは、この手法を航空機エンジン制御システムの要求記述に適用することにより、英語を用いた要求記述の多くの問題を解消できたと報告している。

以下では、まずEARSによる要求記述テンプレートを紹介する。次に、自然言語で記述された要求をEARS形式で記述するための方法について説明する。さらに、適用事例と適用上の留意点について解説しよう。

EARSテンプレート

次では参考のために英語構文も示す。

◆遍在型(Ubiquitous)

無条件に動作することが求められる要求を記述するのが、遍在型要求テンプレートである。いたるところに存在することが遍在の意味である。

【構文1】〈システム〉は〈応答〉する必要がある

例:制御システムは燃料残量を提示する必要がある。

[英語構文]〈system name〉shall 〈system response〉

◆契機型(Event Driven)

【構文2】〈望ましい条件〉の〈契機〉が発生した場合、〈システム〉は〈応答〉する必要がある

例:正しい条件の点火が発生した場合、制御システムは点火スイッチをオンにする必要がある

[英語構文]WHEN〈optional preconditions〉〈trigger〉the 〈system name〉shall〈system response〉

◆不測型(Unwanted Behavior)

不測の事態に対処するための要求を記述するのが、不測型要求テンプレートである。不測の事態としては望ましくない契機が発生したか、望ましくない状態に遷移したことなどが考えられる。

【構文3】〈不測の事態〉が発生したとき、〈システム〉は〈応答〉する必要がある

例:法定速度超過が発生したとき、制御システムは速度制限装置をオンにする必要がある

[英語構文]IF〈optional preconditions〉〈trigger〉,THEN the〈system name〉shall〈system response〉

◆状態型(State Driven)

システムがある状態にいるときに限って、動作することが求められる要求を記述するのが状態型要求テンプレートである。

【構文4】〈システム〉が〈状態〉にある限り、〈システム〉は〈応答〉する必要がある

例:自動車が走行状態にある限り、制御システムはエンジンに燃料を供給する必要がある

[英語構文]WHILE〈in a specific state〉,the〈system name〉shall 〈system response〉

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第59回以前は要求工学目次をご覧下さい。


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