(前NTTデータ フェロー システム科学研究所長)山本 修一郎
最近になって、昨年出版された「ストーリーとしての競争戦略」を読んだ。今年1月の週刊東洋経済でも特集されたので、ご存知の方も多いかもしれない。この本のポイントは、成功したビジネス戦略には、ビジネス・ゴールに向けた構成要素間の因果論理(因果関係)を論理的なストーリーとして分かりやすく説明できることにある。つまり、ゴール指向でビジネス戦略を説明できると主張していた。実際、この本ではサッカーをたとえに使って、ゴールへパスをつなぐことを因果関係とみなして説明している。500ページほどもあったが、ゴール指向の本だということが分かると、それからは実に読みやすかった。
そこで今回は、戦略ストーリーをゴール指向要求工学の視点から考えてみる。
まず、戦略ストーリーの構成要素を整理して、ユニクロの競争戦略を図解してみよう。次に、前回紹介したバランス・スコアカードの戦略マップと比較してみよう。
また、戦略ストーリーを用いて戦略を構想する上での留意点についてもまとめる。
戦略ストーリーとは
優れた戦略ストーリーを構成する基本概念には、表1に示したように、競争優位(Competitive advantage)、コンセプト(Concept)、活動要素(Component)、重要要因(Critical core)、評価基準(Coherency)がある[1]。これらが戦略ストーリーの5Cである。
優れた戦略ストーリーには、利益を創出する競争優位性が必要である。優れた戦略ストーリーには、顧客価値を創造するためのコンセプトがある。優れた戦略ストーリーには、戦略的位置の選択と組織能力の形成という2つの活動がある。優れた戦略ストーリーには、重要要因としての競争戦略の一貫性を実現する方式が必要である。優れた戦略ストーリーの構成要素間の因果関係が、成立する確率が高いことが確実性である。
また優れた戦略ストーリーの因果関係が、量的に多いことが豊富性である。さらに、優れた戦略ストーリーの構成要素間の因果関係の連鎖が長いことが拡張性である。
このように戦略ストーリーの5Cを用いることで、優れた戦略ストーリーをわかりやすく説明できる。戦略ストーリーを図解するときには、評価基準以外の最初の4Cを用いる。評価基準は、戦略ストーリーの因果関係を評価するために用いる。
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- 60:要求とアーキテクチャ
- 61:要求と保守・運用
- 62:オープンソースソフトウェアと要求
- 63:要求工学のオープンな演習の試み
- 64:Web2.0と要求管理
- 65:ソフト製品開発の要求コミュニケーション
- 66:フィードバック型V字モデル
- 67:日本の要求定義の現状と要求工学への期待
- 68:活動理論と要求
- 69:ビジネスゴールと要求
- 緊急:今、なぜ第三者検証が必要か
- 71:BABOK2.0の知識構成
- 72:比較要求モデル論
- 73:第18回要求工学国際会議
- 74:クラウド時代の要求
- 75:運用要求定義
- 76:非機能要求とアーキテクチャ
- 77:バランス・スコアカードの本質
- 78:ゴール指向で考える競争戦略ストーリー
- 79:要求変化
- 80:物語指向要求記述
- 81:要求テンプレート
- 82:移行要求
- 83:要求抽出コミュニケーション
- 84:要求の構造化
- 85:アーキテクチャ設計のための要求定義
- 86:BABOKとREBOK
- 87:要求文の曖昧さの摘出法
- 88:システムとソフトウェアの保証ケースの動向
- 89:保証ケースのためのリスク分析手法
- 90:サービス保証ケース手法
- 91:保証ケースのレビュ手法
- 92:要求工学手法の再利用
- 93:SysML要求図をGSNと比較する
- 94:保証ケース作成上の落とし穴
- 95:ISO 26262に基づく安全性ケースの適用事例
- 96:大規模複雑なITシステムの要求
- 97:要求の創造
- 98:アーキテクチャと要求
- 99:保証ケース議論分解パターン
- 100:保証ケースの議論分解パターン[応用編]
- 101:要求発展型開発プロセスの事例
- 102:参照モデルに対する保証ケース
- 103:参SEMATの概要
- 104:参SEMATの活用
- 105:SEMATと保証ケース
- 106:Assure 2013の概要
- 107:要求の完全性
- 108:要求に基づくテストの十分性
- 109:システムの安全検証知識体系
- 110:機能要求の分類
- 111:IREB
- 112:IREB要求の抽出・確認・管理
- 113:IREB要求の文書化
- 114:安全要求の分析
- 115:Archimate 2.0のゴール指向要求
- 116:ゴール指向要求モデルの保証手法
- 117:要求テンプレートに基づく要求の作成手法
- 118:ビジネスゴールのテンプレート
- 119:持続可能性要求
- 120:操作性要求
- 121:安全性証跡の追跡性
- 122:要求仕様の保証性
- 123:システミグラムとドメインクラス図
- 124:機能的操作特性
- 125:セキュリティ要求管理
- 126:ソフトウェアプロダクトライン要求
- 127:システミグラムと安全分析
- 128:ITモダナイゼーションとITイノベーションにおける要求合意
- 129:ビジネスモデルに基づく要求
- 130:ビジネスゴール構造化記法
- 131:保証ケース導入上の課題
- 132:要求のまとめ方
- 133:要求整理学
- 134:要求分析手法の適切性
- 135:CROS法の適用例
- 136:保証ケース作成支援ツールの概要